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桜吹雪の行く末は
風が私を撫でる。桜の花びらが私の顔にぶつかる。
「今日はいい花見日和ですね?」
「あぁ、そうだな。いい鼻水日和だ。鼻かめ、鼻を」
私はそう言ってくれた男刑事に背を向けるようにして鼻をかむ。
男刑事に花見を誘われたのだ。
「それで私に何か用ですか?結婚の見合いですか?それとも宗教勧誘ですか?それとも私にあんなことやこんなことを?」
「いや、事件だ。あと色々誤解を招くことを言うな」
「事件なら聞きます。それと酒を飲ませてあげたり、飯を食わせてあげたりですよ?何妄想してるんですか?いやらしいお方だわ」
「そうかそうか。じゃあ、奢り無しな」
「前言撤回。どんどん妄想してください」
「おい……」
微かな笑いが二人の間で生じる。
「それで事件とは?」
「あぁ、ちょうどこの木で首を吊って亡くなった奴がいる」
「あの……風でよく聞き取れませんでした。もう一度言ってください」
「そこの桜の木に吊った奴がいる事件だ」
「二度も同じようなことを言うんですね?そして私怖いです」
「聞こえてたじゃないか。近くに寄ろうか?」
「叫びますよ?」
「なんて?」
「汗の染み付いた男が私をヌルヌルにしようとするから助けてーって」
「おい……。喉乾いたな」
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