想い

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想い

どうしてお前は俺の横にいないのだ。 散々言ったのに、俺の横を離れるなと。 あれ程口酸っぱく言ったのに、お前の耳はなんの為に付いているんだ。 いつもそうだったな。 お前は人の話を聞かずにいつも突き走って、何度肝が冷えたことだったか。 でも、それら全てに意味があることを俺は知っている。だから無理矢理止めることも出来なかった。お前はそれをいいことに無茶ばかりしていたが。 本当のことを言えば止めさせたかった。危ない真似なんてお前はする必要ないと言って、この腕の中に閉じ込めたかった。 が、そんなことをしたらお前が死んでしまうのも分かっていた。羽をもがれた小鳥などお前を生きた屍にするようなものだろう。お前の輝きを奪いたくなかった。いつまでも見ていたいと願っている自分が確かにいた。だから、いつでも助けれるように、護れるようにそばにいたのに。 護られていたのは、俺の方だったんだな。 今更気づいた。俺はお前が横に居たから俺でいられたんだ。お前が居たから安心できた、笑えた、怒れた、悩めた。 ……泣けたんだ。 本当は今すぐお前の横に逝きたいが、そんなことをすればお前は怒るだろう。そして許さないのだろう。それでも、と思う気持ちは確かにある。が、もう少しだけこの世界で生きよう。 お前が繋いでくれた命でお前の分も生きようなどとは思わん。ただ、お前の想いを無下にせずに生きよう。お前が望むだけ、俺は生きよう。 だから最後はお前が迎えに来い。それ位の褒美を俺に与えてくれても構わないだろう。 そして、また共に歩もう。いつまでも、な。
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