19人が本棚に入れています
本棚に追加
『とうとう時限爆弾がカウントダウンを始めた』
秋が深くなってくるころ、風邪をこじらせて入院してからよくなって悪くなってを繰り返して結局年越しも病院で過ごすことになってしまった。
弱ったところを見られたくなくて冬馬やまどかちゃんがお見舞いに来てもずっと母に断ってもらっていた。
それなのに…
母のいない時間にまどかちゃんは病室にやってきた。
久しぶりに見る彼女の顔は一層、大人っぽく綺麗になっていた。
羨ましくて見惚れてしまうほどだった。
女の私だってこんな風になるのだからあいつが顔を赤らめるのも仕方ないなと自嘲的に笑った。
ベッドサイドの椅子に座り膝の上の手をぎゅっと握ったまま彼女は口を開いた。
「よしのちゃん……うらやましいよ」
「うらやましい?」
こんなに管に繋がれて、所々、肌の青くなった病人のどこが羨ましいんだろうと…不思議そうに見つめ返した
「もしも、本当に好きじゃないならちゃんと振ってあげてよ」
何を言っているのかわからなくて
「____んっ?」
聞き返す。
彼女の瞳を覗き込むと大きな涙の粒がいくつも零れ落ちた
「ゴメンナサイ…」
彼女は急に謝って、ゆっくりと言葉を絞り出すように話し出した。
最初のコメントを投稿しよう!