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彼女の話によると高校に入って私に声をかけてくれたのは冬馬に近づくためだったそうだ。
中学時代の陸上の大会で彼女は冬馬に一目ぼれをした。
それから、彼の志望校を必死に探して同じ高校に入った。
でも、彼の隣にはいつも私がいて、仕方なく私に声をかけた。
高校で冬馬が陸上部に入らなかったのも私と一緒に帰るためだったのだろうと言った。
恥ずかしい話、そんなこと私はぜんぜん気がついていなかった。
中学生の頃の冬馬は県の大会で入賞するくらい足が速くて、期待されていたそうだ。
「全然知らなかった…」
「……」
「でもね、それは冬馬が私を好きとかじゃなくて優しいからだよ」
冬馬が好きなのはまどかちゃんだよ、
そう言おうとした時、彼女の方が早く口を開いた。
「この前、彼に告白したら他に好きな人がいるって振られちゃった」
「……」
「ずっと、ずっと彼のこと見てきてね、好きな子ってよしのちゃん以外には考えられないんだ」
「……」
それでも信じられないという顔をしていると
「信じて、ずっと私は彼のこと見てきたんだから」
幸せそうに、苦しそうに、そういった。
「だからね…よしのちゃんも素直になって好きなら好きって言ってあげてよ」
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