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帰り道。
強い風が吹いていた。
駐輪場に溜まっている男子は女子が通るたびスカートが捲れる様子を見てテンションの高い奇声を発していた。
私は気が進まなかったが引き返すわけにもいかなくてそこを足早に通り過ぎると
「……ない」
「あ~ないない」
馬鹿にしたようなくすくす笑いがおこる。
奇声を浴びせられるのは嫌だけど…
こっちの方が辛い。
自尊心……
たぶん今傷ついたのは自尊心というやつだ。
それでも無表情のまま通り過ぎ、校門をでるとさらに速足で歩きだした。
「……」
これは…まずい。
泣いてしまいそうだ……
こんな時は無心にならないと。
そう、いいきかせる。
でものみ込まれそうになる。
黒くてもやもやしたものに追いかけられているような気がして、わき目もふらず歩を進めた。
早く家に帰って1人きりになりたい。
もしも一筋でも涙を流してしまったら決壊して収拾がつかなくなってしまう気がする。
苦しい…息苦しい
でも大丈夫、大丈夫、
私の心はちゃんと何にも感じていない。
「オイッ、オイッてば!」
後ろから声をかけてきたのは冬馬だった。
狭くなっていた視界が広くなった気がした。
「お前、チビのくせに歩くの早すぎ」
「……」
彼にはそう言われてもちっとも傷つかないのはなぜだろう?
今でも冬馬は同じクラスだけど中学に入ってからは殆ど話さなくなっていた。
「何か用ですか?」
もう昔とは違うから他人行儀にそう言った。
「別に用とかはないけど」
「じゃあ、ついてこないで」
「はぁ?俺も帰り道こっちだし……」
それからしばらく無言のまま歩いた。
三叉路に差し掛かると彼が口を開く
「そろそろ、桜咲いてるんじゃね?」
桜トンネルに続く道を指し歯を見せて笑う
でも……
「いいよ、わざわざ遠回りしなくて」
さくらを見たってもう、綺麗だと思う自信がない。
今の私には目にうつるものが全部灰色に見えるんだ。
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