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「あ~、もう、お前なんなの?!」
急に彼は大きな声を出した。
「……」
「泣いてるかと思ったから部活さぼって追いかけてきたのにつんけんしやがって…」
「……」
「他人行儀で……」
「……」
「それに、ガキんとき、何回お前の回り道に付き合ったと思ってんだよ」
私の腕を引っ張り
「こっちから帰るぞ」
強引に桜トンネルの方へ連れていかれた。
花はまだ全然咲いていなかった。
顔をあげて彼の横顔を見ると思いのほか残念そうな顔をしていた。
「そんなに桜、好きだったっけ?」
「ちげーよ。お前が元気になると思ったから……」
「……」
「……」
一筋、涙が出た。
気がつかれないように拭う。
相変わらず、不器用だけど優しい奴だと思った。
桜トンネルを抜けて、踏切が見えた。
マンションまではもう少し。
不意に彼が言う。
「お前の親、心配してる」
「うん」
そんなこと痛いほど知ってる。
「冬馬、なんかうちの親に言われた?」
「言われた、ってか聞かれる。学校でうまくやってるのか、とか友達いるか、とか……」
「…………」
これ以上、お母さんを泣かせたくない。
「……い、でっ」
「____えっ?」
「私に友達いないこと、言わないで」
「バカ、言わねーよ、てか、いるじゃん友達」
「……?」
不思議そうな顔をする私にムカついたような視線を向けて彼が言う
「お、れ、」
そのことを忘れていた自分に呆れて、小さく噴き出し笑った。
「そうだねっ」
カンカンと音が鳴り、遮断機が下りる。
急げば渡ってしまうことも出来たけど、久しぶりだしもう少しだけゆっくり話したくて足を止めた。
騒々しい音に混じり彼の小さな声が耳に入る
「俺、知ってるから……」
「えっ?」
「よしのが病気だってこと知ってるから……」
不意を突かれて押し黙る
「……」
「お前のかぁちゃんが、うちのかぁちゃんに話してるの聞いた」
「……そう」
喉が急に乾いて唾をゴクリとのみ込んだ。
「身長くらい気にすんなって」
あっけらかんと言う。せっかく励ましてくれてるのに私は悔しくなった
「身長、だけじゃないもん。冬馬にはわかんないよ!一人でどんどん大きくなって!」
悔しくて手が震えた。
言った瞬間、これって八つ当たりだと気がついたから後ろめたくなった。
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