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一章 終わりの春
目が合うと、なぜか眠ってしまう人がいる。
理由なんて分からない。
眠りに落ちた人は、数時間で目覚める人もいれば、そのまま目覚めない人もいた。
皇輝が何か乱暴を働いたせいでは、と疑われることも多かった。
一緒に遊んでいた子供や、挨拶を交わしていた近所の老人が倒れる度に、その場に居合わせた皇輝への疑惑が膨らんでいく。
ある日、皇輝の家の庭に生ゴミがばらまかれた。玄関先の花壇が踏み荒らされ、塀に落書きもされた。
最初に母がおかしくなり、喚いては家中の物を皇輝に投げつけるようになった。
父は皇輝の顔を見る度に、お前がそんなだから、と皇輝を責めた。
学校でも何人か先生やクラスメイトが倒れて、皇輝は呪われているという噂が広まり、両親は皇輝を学校に行かせなくなった。
小学2年の4月だった。
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