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「気がついたら丹一さんもE4も消えていたわ……これが、五兎を追う者は一兎をも得ずってやつね」
いつの間にか消えていたイケメンを探し、玉子は辺りを見渡しながら歩いた。すると前方に、花束を抱えた男たちの人だかりができている。
「何事かしら? イケメンは見当たらないけど、ちょっと気になるわね」
興味本位で覗いてみた。
人だかりの中心には、お姫様を想像させる美しい女性がいる。
「ありす様! 結婚して下さい!」
男たちは次々にプロポーズしていくが、ダンディーな執事に止められていた。
「お嬢様には、このセバスチャンが指一本触れさせん!」
「セバス……少々疲れました。早く次のクリエイター様へ挨拶に参りましょう」
「仰せのままに」
ありす様と呼ばれた姫が指示を出すと、執事はあっという間に男たちを退ける。
呆気にとられて立ち尽くすと、お姫様と目が合ってしまった。
「あらっ、可愛らしいお嬢さんね。こんにちは。ありすと申します」
「えっ、あっ、その、玉子と申しますです!」
オーラが凄すぎて、上手く声が出せない。
玉子の脳内に危険信号が鳴り響いた。
この人を行かせちゃ駄目よ。もしかしたら、イケメンを全員取られちゃうかも知れないわ。5秒で作戦を考えるのよ、玉子!
……そうだわ! クリエイターに挨拶と言っていた。叔父さんの名前を出して、パーティー終了まで足止めするのよ。これだけ美しい人なら、叔父さんはひたすら話し続けるはず!
「さあ、お嬢様。行きましょう」
「セバス……まだ挨拶をしていないクリエイター様はどなた?」
「快紗留様、五丁目様、丹一様、兎の助様、あめ様……それと、タッくん……」
今、タッくんって言った! 私は聞き逃さなかったわ。叔父さんを使って足止めするチャンスよ!
「……タッくん様ですが、先ほど犬に噛まれ、泣きながら走り去って行きました。この方の挨拶は次回でも宜しいかと思われます」
「そう、残念ですね」
……
……
本当に残念だわ!!! 残念過ぎる叔父さんよ!!!
玉子に打つ手は無く、ありす様とセバスチャンを見送った。
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