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「きゃっ!?」
逃げる様に走り出した私は、勢い余って何かにぶつかってしまった。
「おっと……大丈夫ですか?」
倒れそうになった私を、黒い人影が優しく包み込む。
「あっ……ありがとうござ……!?」
衝撃でクラクラしていた視界に、ぼんやりと写り込む優しい微笑み。それは先ほどのイケメンとは違った、ミステリアスな印象を受けるイケメンだった。
黒を基調とした清潔感溢れる服装。それでいてネコの様な優しい笑顔。
「あっ……あの……その……」
「どうしました? 何処か痛むのですか?」
「結婚して下さい!」
……
……
しまった! 本能のままにプロポーズしてしまった! 王子に抱きかかえられ、プロポーズをされてキスへと展開する妄想が口から飛び出た!
駄目よ、玉子! この方とは、出会って10秒しか経って無いわ!
「ふっ……面白いお嬢さんだ」
イケメンは私の体を優しく起こし、追い打ちで屈託の無い笑顔のビームを浴びせてきた。
……もう駄目。お父さん、お母さん……来年には初孫の顔が見せられそうです。
「私の名前は丹一。君は?」
「えっと、その……恥ずかしいのですが……のり……たまこです……」
こんな優しい人なら、私の名前で笑わないはず……
顔を赤らめて俯き、ゆっくりとイケメンの表情を確認した。
すると、予想に反した険しい表情のイケメンになっている。まるで、獲物を捕らえる様な眼差しに、全てを支配されてしまいそうだ。
……
……
……これはこれで問題無いわね。だってイケメンだもの。
「……のりた祭りを知っているのか?」
「えっ? 祭り?」
口調まで変わってる。新たな感覚が体を襲い、ゾクゾクとした。
「何も知らないのか? 偶然にしては……」
「あっ、叔父さん……タッくんって言うクリエーターなら何か知ってるかも」
「タッくん? ……ナンバーシックスが来てるのか!?」
「ナンバーシックス?」
一瞬目を離した隙に、忍者の如くイケメンは消えていた。
「あれっ? 丹一さーん!」
突然消えてしまったイケメンを探して歩き出す。
その先には『似顔絵書きます 画伯』という看板を掲げたイベントブースがあった。
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