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「酷い目に遭った……」
俺はフラフラと美女を探し続けた。
癒されたい。まだ、浮浪者の食べ掛けチョコを口にしただけだ。
「このままでは終われない……ん? あれは……おーい! あめさーん!」
「あっ、タッくん!」
清楚で可愛らしい笑顔を振り撒くその人は、人気クリエーターのあめさんだ。まるで魔法を掛けた様な小説は、見る人の心までも魅了する。
「久しぶりだね。ちょっと忙しくてさ……」
「そうだよ! 最近私の小説を読みに来てくれないでしょ? 淋しかったよっ!」
……笑顔が可愛すぎる。理性が崩壊しそうだ。
手ぐらいは握ってもいいだろうか? 玉子が妻に告げ口しても土下座すれば……3日間の夜飯抜きくらいで許してくれるはずだ!
「あめさん。俺も淋しかったよ」
「あっ、タッくんも何か食べる?」
膝を突いて頭を下げ、紳士の様に手を握ろうとした瞬間、あめさんは食事が並ぶテーブルへと振り返る。
そして、あめさんの肘が俺の顔面にクリーンヒットした。
「ぐはっ!?」
両手で顔を塞いで倒れ込み、打ち上げられた魚の様に悶える。
バタバタと暴れる俺の頭上で、あめさんの声が聞こえた。
「あっ、大丈夫!?」
……
……
もしかして、このまま目を開けたら……あめさんのロングスカートに隠された生足が見えてしまうのでは?
不可抗力だ。きっと妻も、10日間夜飯抜きくらいで許してくれるだろう。大げさに暴れ続けて、チラッと見えてしまったなら誰も責めないはずだ。
痛みは引いて来たが、まだ苦しいと暴れる演技をして、目を塞いでいた両手を解放した。
……
……
……暴れる演技が激し過ぎたのか?
そのまま顔面をヒールで踏まれてしまった。
「ギャアーーー!!!」
「ちょっ、タッくん! 大丈夫!?」
自業自得。欲望のままに、変な動きをしているから天罰が下ったのだろう。
「だっ、大丈夫だよ! また後でね!」
ヒールの跡がついた顔を見せる訳にはいかない。
タッくんは逃走した。
そして、この悲劇を目撃していた、師匠と仰ぐ人物が動き始めた。
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