のりたまこ③

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 困った。未来の旦那様が消えてしまった。  途方に暮れていると、背後から声を掛けられる。 「そこの美しいお嬢さん。似顔絵は如何かね?」 「えっ? 私の事ですか? そんな、美しいだなんて……はっ!?」  振り返ると、イケメンがニッコリと微笑んでいる。  全てを包み込んでくれそうな、優しいお兄ちゃんの様なスマイル。 「是非、お願いします! 私たちの未来の似顔絵を!」  また余計な事を言ってしまった。 「未来? よく分からんが、座りたまえ」 「はい!」  嬉し過ぎてよだれが……おっと、駄目よ玉子! ここは隙を見せず、グイグイ押し切るべきだわ! 「似顔絵という事は、イラストを投稿されている方なのですか?」 「小説が主力だよ。まあ依頼されれば、イラストも描くがね」  カッコよすぎる! 二刀流!? あのプロ野球選手なんて目じゃないわ! ペンを走らせる姿に惚れ惚れしてしまう。  すると、更なる奇跡が起こった。 「あれっ、誉さん?」 「お久しぶりです、清水さん」 「おお! 快さんに、丹さんも来ていたのか!」  目の前に、先ほどのイケメンたちがいる! 「おーい、出来たぞ」  眩し過ぎて、直視できないわ! 「聞いとるか~?」  はっ!? もしかして……これが流行語大賞にも選ばれた、トリプルスリーってやつなの!? 何のことか当時は分からなかったけど、理解したわ! 「出来たって言ってるのに……まあいいか。汚れない様に封筒へ入れとくから、後で見なさい」  A3サイズの封筒を目の前に出され、ようやく正気に戻った。 「あっ、有難うございます!」 「家宝にしたまえ」 「勿論です!」  幸せ過ぎてどうにかなってしまいそうだ。しかし、後ろにいるイケメン二人から、とんでもない言葉が発せられた。 「誉さん、あんまり女の子ばっかり書いてると、プラさんに嫉妬されるよ」 「そうですよ。プラモさんも大切にしないと……」  ……えっ? プラさん? プラモさん? 「お前ら、いい加減にしろよ。本気にする人がいたらどうするんだ」  本命がいたの?  ……  …… 「酷い! 私とは遊びだったのね!!!」  本気にした玉子は封筒を抱きしめ、泣きながら走り出した。  その先には、あのピアニストが……
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