のりたまこ⑥

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「おねーさまー! おねーたまー! 女神さまー!」  あれだけ輝いたオーラを放っていれば、すぐに見つかる……そう思っていたけど、女神は何処にもいない。 「いないわね……きゃあっ!?」  キョロキョロしていると、人にぶつかってしまった。 「あっ、大丈夫ですか!?」 「痛たた……誰よ! 私とぶつかって恋を始め……たい……人は……」  可愛らしい女の子が申し訳なさそうに覗き込んでくる。  ……  ……  思わず抱きしめてしまった。 「きゃっ!」 「あっ、ごめんなさい! 子猫みたいに可愛いから、思わず抱きしめちゃいました。えへへ……私、玉子っていいます。あなたは?」 「ふふっ、面白い方ですね。私は瑞己梨と申します」  ……無邪気な笑顔が可愛くて、もう一度抱きしめる。 「えっ? あの……」  しまった! これが母性本能なの? いつの間にか体が反応してたわ。 「……玉子さん?」  そんな仔犬の様な目で見ないで! 私はノーマルよ。女神は別として、イケメンが好きな普通の乙女なのよ! 何より、女の子じゃ結婚出来ないわ。野里って名字を変えられないじゃない! 「……」  ウルウルした瞳で見上げてくるから、頭をヨシヨシしてみた。  ……  ……  何をやってるの、玉子!? 少女漫画に出てくるヒロインを想像して、頭を撫でてしまったわ! この人は、優しくて温かい恋愛小説を書いているに違いない。きっとそうよ。だから抱きしめてしまうのよ! 「……あっ……」  強く抱きしめ過ぎたのか? 瑞己梨さんから可愛い声が漏れた。  ……  ……  フィーーーバーーー!!!!!!  玉子は泣きながら逃げ出した。 「あっ、ちょっ、玉子さん!?」  助けて下さい! イケメンを追いかけていたあの頃に戻して下さい!    完全に違う世界の扉を開いてしまった玉子。  その先には、玉子を救う事の出来るイケメンがいた…… 
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