のりたまこ①

2/2
前へ
/67ページ
次へ
「あっ、あの……こっ、こんにちは!」 「ん? 俺に言ってる?」  しまった! 名前すら知らないイケメンに、本能のまま声を掛けてしまった! 「あの……その……」 「もしかして、俺のファンの子かな?」 「えっ? あっ、そうです! 作品が面白くて……」  駄目よ、玉子! そんな嘘はすぐにバレるわ! ……でも、イケメンは諦めたくない! 「それは嬉しいな。どの作品が好きなの?」 「あ……あの……ほらっ、爽やかなイケメンが登場する……」  この人は甘い青春小説を書いているに違いない。だって、こんなに爽やかなんだもの。 「爽やか? うーん……」  違ったか!? 「もしかして、花舞えば 葉は繁る ……かな?」 「そう、それです! あの恋愛ストーリーにドキドキしちゃいました!」 「イケメンかどうかは別として、嬉しいよ」  奇跡的に話が繋がった! ありがとう、神様! 玉子は今夜、大人の階段を上ります! 「じゃあさ、イベント作品も読んでくれたのかな?」 「えっ? ……ええ、勿論ですよ。あれですよね、あれ……」 「そう、のりたまこ!」  ……  ……  のりたまこ? 「タッくんてクリエーターが、どうしても書いてくれって言うからさ。出てくる虫も気持ち悪いし、ホラー作品としては秀逸な出来栄えだと思うんだよな。あれ以来、のりたまこが苦手に……」  ……虫? ホラー? のりたまこ?  叔父さんは、いったい何をしたの? 「あっ、ごめん。大事な事を聞いて無かったよ。君の名前は……」  ……  …… 「イヤーーー!!!」  玉子は凄い速さで逃げ出した。  その先には、スマートな黒猫をイメージさせるイケメンが待ち構えていた……   
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加