プロローグ

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そして俺の隣には、少し露出が多い気がするステージ衣装をバッチリ着こなした『ミュア』が軽くウインクをした後に、口パクでガンバレと言っている… 大きなお世話だ。  頭を正面に戻し、短く息を吐いて気持ちを落ち着かせた後、頭をすっぽり覆っているお面を軽く持ち上げて位置を整える。 もう一度、今度は深く息を吐くと、身体の中心から声を出すように音色を奏でいく。 柔らかいギターの音色と交わり、ここに新しい世界が創り出されていく… そして声を張り上げた瞬間、全てがひとつになり新しい世界が始まる。 メロディーと演奏、そしてメンバーの気持ちと、ここにいる全ての人たちの心と… … ……… 視界が暗くなり、静寂に包まれる。 目を上げると客席から大歓声が大波のように一気に押し寄せてきた。 ーー あぁ、終わったのか… 「お疲れさま!」 溢れんばかりの笑顔で、ミュアが俺の元に駆け寄ってくるのを合図に、メンバー全員が中央に集まり横並びになって、「せーの!」の合図で深くお辞儀をすると、またしても大歓声の大波が客席から押し寄せてくる。 言葉にできないような達成感と充実感が全身に広がるが、直ぐにそれは疲労感と倦怠感に変わってしまった。 今にも崩れ落ちそうな身体を支えながら楽屋に戻って来ると、倒れ込むように椅子に腰掛けた。 「あ~…」     
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