顔出しNGの休日

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「歩美、いつもありがとな… 」 「え? どうしたのよ、急に」 突然のありがとうに驚いたのか、歩美が飲みかけていたジュースをこぼしそうになってしまう。 「俺が歩美を守ってやらなきゃと思ってたのが、いつの間にか歩美に気を遣われて… 」 満点の星空と町の灯りを背景に悲しみを歌に変えて歌う歩美の姿がまぶたの裏に蘇る。 それ程までに鮮烈に脳裏に焼き付いていた。 「私は勇志のおかげで今こうしていられるんだよ?」 「歩美… 」 「勇志はいつだって私を守ってくれてる。私はただ… 守ってくれる勇志の側にいたいだけ… 」 「違う…! 俺は…!」 そう言いかけた時、歩美の携帯が着信をしらせる。 その音に遮られ、それ以上を話すことはできなかった。 「もしもし桐島です。仕事…? 今日ですか? はい、はい、わかりました。 夕方からの生放送ですね。はい、今、勇志と一緒にいるので私から伝えておきます。はい、じゃあまた後で」 「水戸さんから?」 「うん、今日の夕方から生放送の音楽番組に出演が決まったって… 当初出る予定だった海外の大物アーティストがドタキャンした穴埋めみたい」 なかなか迷惑な話だな、それは。     
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