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桜は咲かない
「うっ……」
案の定、胃が責め苦を受けるように痛み酸っぱい過去が胸を満たす。
何度も、何度も切りつけた左腕の傷がうずく。
やっぱり来るべきじゃなかった。希望を胸に校門をくぐった無知な私に唾を吐きたい。誰も信じなければ、裏切られずにも済んだのに。そうやって生きてきて、心を食らいつくして何も感じなくなって、やっと裏切りに満ちた世界を直視できるようになったのに。
これ以上私をどうするの? 闇に呑まれ、空洞しか残らないこの胸を掻き毟るのは何?
私は母校である小学校の前に居る。私に満開の桜は見えない。苦しくなるだけだから。
「臭いからこっちくんな」
「キモイから死んで」
「キャー森嶌菌が移ったー」
掃除のとき私の机は運ばれず、鞄はいたぶるように私の目の前でボロボロに破かれ、終いには登校しても教室に入れなかった。窓からかつての友人すら、卑屈な笑みを浮かべてこちらを見ている。
「うう……」
ふら、と視界が歪み、私は膝を抱えてうずくまった。
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