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年齢は二十代後半ぐらい、少し吊り上がった目元が頭の回転の速そうな印象を与える、知的な美人の類だ。
どこかのレストランで撮ったのか、女性はフォークに刺したステーキの肉を左手で持ちながら笑っている。
「これがストーカーです。実は先ほど新稲家の敷地内に立ち入ってうろついてたのを逮捕しましてWhat's coincidence!」
クリームパンを残り三分の一まで食べながら見せてくれたのは、スマホに映った中肉中背の男だった。
黒いジャンパーを着た短髪の男で、顔を隠そうとしているところを撮影されたらしい。
その時も新稲の父親は奇妙な行動をとった。
騒ぎを聞きつけて外に出てくると、ストーカーと分かって殴りかかろうと踊り出たはいいものの、あらぬ方向に向かっていってしまい、転んだという。
「殺人班はストーカーの男を事情聴取中です。毎日違う道を歩いて帰るから尾行するのが大変だったと、半ばストーキングを認めてますから、いずれそのうちにone of these days、自供すると思われます。その男が結婚を知って被害者を襲ったのが妥当でしょう。ですが、そこで出てきたのがおにぎりの問題です」
そう言って五反野が松樹を見つめる。だが、彼女は半分寝ていた。
杉元に肩を叩かれてはっと目を見開く。
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