12人が本棚に入れています
本棚に追加
「こうなると、もうちょっとやそっとでは起きません。おそらく明日の朝までは目を覚まさないでしょう」
「それは好都合」
そう言って、五反野は松樹の隣に腰を下ろした。
少し疲れた様子ではあるものの、松樹と話していた時のような軽薄さは見当たらない。
口調も普通だし、何かがおかしかった。
「……松樹さんのアドバイスのおかげで、無事に犯人が逮捕できたよ。犯人は被害者の交際相手、その父親だった」
そこだ、と杉元が息を飲む。
結局、松樹は犯人とその根拠を教えないまま寝てしまったのだ。
しかし五反野は、彼女の指摘したクリームパンからヒントを得てそれを殺人班に伝えると、ものの一時間もしないうちにあの初老の男――父親を任意同行で事情聴取し、逮捕にまでこぎ着けた。
「どうやら、杉元さんは分かっていないらしい」
「え? ええ……クリームパンが何なのか……」
悔しいが、頷かざるを得ない。
「松樹さんはクリームパンではなく、クリームパンを持っている私を指さした。事件抜きで考えたら、普通は人と話している時に物を食べることは失礼になる。そうだろ?」
「それは……まあ」
最初のコメントを投稿しよう!