○秒ルール

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「こんだけもらってれば、あたしがチョコあげる必要性ってないんじゃないかな?」 こんなあたしの質問に、タク兄の返事はこう。 「あっちゃんのチョコは特別。ほら、昔から毎年ずっと貰ってるからさ。お決まりっていうか、無いと妙に寂しいっていうか」 「へえ、そんなものなの?」 あたしが物心ついた時には、いつもタク兄の存在があった。 初めてあげたチョコは、私のおやつだったチルルチョコ。 そんなチョコを「ありがとう、あっちゃん」と笑顔で受け取ってくれたのが嬉しくて、それからは毎年タク兄にチョコをあげるのが恒例となった。 今ではそのレベルも上がって、今年のは手作りチョコだったりするのだが。 タク兄はあたしのあげたチョコをガサガサと開けだした。 「お、今年はトリュフかぁ! もしかして手作り? 勉強大丈夫かぁ?」 そう言ってその中のひとつをポイと口の中へと投げ込んだ。 「うん、甘さ控えめのビター味! やっぱあっちゃんは俺の好み分かってんなあ」 うーん。他の女の子に何だか罪悪感。 いつもあたしのチョコだけは食べてくれるタク兄。 でもそれは、幼馴染としてのあたしへの優しさなのだと分かっている。 タク兄にとって、あたしは妹のような存在でしかない事も。 だから、あたしには決めている事がある。 タク兄に彼女が出来たら、もうチョコをあげるのはやめようって。 なのに。こんなにモテるのに。 何故かなかなか彼女が出来ないんだよね、タク兄は。
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