○秒ルール

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「何でだろ」 その疑問をあたしは声に出してしまっていた。 「何が?」 「あ、いや……何でタク兄は彼女が出来ないのかなぁって。こんなにモテるのに、選り好みしすぎてんじゃない?」 そうすると、タク兄は少し神妙な面持ちになった。 「好きな子は……いるけど」 「え……っ」 ズキン、と一瞬あたしの心臓が悲鳴をあげる。 え? なに、コレ? 「チョコ……くれなかったの、その子?」 「いや、くれたけど」 「ふーん。何だぁ、良かったじゃん」 それって両想いって事じゃない。 そのチョコはきっと紙袋の中にはない。 特別なチョコだから、鞄の中にでも大切にしまわれているのだろう。 あたしの心にどんよりとした暗雲が立ち込める。 それはどんどんと広がって、今にも降り出しそうな勢い。 「じゃあ、それいらないでしょ」 「へ?」 あたしは自分のチョコを指差した。 突然のあたしの言葉に、タク兄は目を丸くして驚いている。 「何だよ急に。それにもうひとつ食っちゃったし」 「好きな子から貰ったんでしょ。そっち食べてよ」 なんだろう、このムカムカは。 ウソ。あたし、泣きそう……
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