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スマホの画面にはブラウニーやトリュフと言った美味しそうなチョコレート菓子の画像が並んでいた。見ているのはレシピサイトのようだ。
「香奈はチョコどうするの?」
「んー……あたしも作ろうとは思ってるんだけど」
「今年はアイツに渡すんでしょ~?」
「ちょ、言わないでよ!」
「あ、でもサッカー部の佐々木くんに頂戴って言われてたよね? モテ期到来ですな~」
「ちがっ! あれはただの冗談だから!」
そんな二人の会話に割り込んで来た一人の男子生徒。おそらく彼が加藤なのだろう。
「は? なに? チョコ作んの? お前が?」
「な、なによ! 悪い!?」
「げっ、マジで? まさかのバレンタイン?」
「うるさいっ!」
どうやら彼らは友達以上恋人未満、ケンカ友達のような関係らしい。
「うわー、渡される相手かわいそー。かわいそ過ぎて涙出るわ」
「どういう意味よ!!」
「つーか渡す相手いんの?」
「あ、あんたに関係ないし!」
「実はサッカー部の佐々木くんが香奈にチョコ欲しいって言って来たんだよ。ねー?」
「ちょ、何言ってんのよ!」
「……ふーん。ま、俺はお前から貰ったって嬉しくもなんともねーけど。つかいらねーし」
面白くなさそうに眉根を寄せた加藤が冷たく言い放った。
「ちょっと、加藤!」
「……あんたなんかに渡すわけないでしょ!! ばっかじゃないの!」
香奈は泣きそうな顔で教室を出て行った。そこで鏡の映像は途切れる。大根役者も驚きを隠せない棒読みのアフレコもここで終了だ。
……なるほど。これで大体の流れは把握出来た。
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