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「なんていうか……青春ですね」
「マジなんなのこれ。ケツ青過ぎて嫌になっちゃうんだけど」
結神は天井に張り巡らされた赤い糸を仰ぎ見て溜め息を吐く。
「あー、これあれじゃん。明らかに両思いじゃん赤い糸見なくてもわかるわ馬鹿野郎。要するにあれでしょ? 加藤だか佐藤だかの嫉妬でしょ? サッカー部のなんたらに渡すとか言われたから。だからキツく当たっちゃっただけでしょ? うーわー、これだからケツの青いガキは嫌なのよ」
「いい加減ケツから離れてくれません?」
思わずツッコミを入れてしまった。
「……このまま放っておく気ですか?」
「放っておけばいいんじゃない? 別に恋愛成就とかお願いされたわけじゃないし。あ、天罰下せとはお願いされたけど」
部下は腐りきった生ゴミでも見るような目で結神を見る。
「大体ね、あんなのは佐藤の自業自得よ」
「彼の名前は加藤です」
「そうだっけ? どっちも似たような名前だからいいじゃん細かいなぁ」
彼女には人情というものがないのだろうか。まったく。こんな捻くれた性格だからいつまで経っても彼氏が出来ないんだ、と本人が聞いたら般若のような顔で殴ってくるであろう禁句を内心で毒突くと、部下は参拝客の願いが記されたノートをパラパラと捲った。
何かに気付いた彼は、勢い良く顔を上げる。
「結神様、お仕事です」
「……は?」
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