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「……ぅ……ッ」
体が、怠い。
覚醒していく意識の中、それが真っ先に頭に過ぎり、倦怠感に苛まれながらゆっくりと瞼を開くと、俺を覗き込む涼しいザクロの笑顔とかち合った。
俺、何で…寝てたんだっけ。
「章人おはよう!よく眠れた?」
「………ザクロ」
「ごめんね、まさか気絶するとは思わなかったよ…章人って意外に繊細だったんぐふぅッ!!」
コイツの言葉を聞いてる内に色々一気に思い出した俺は、羞恥心を総動員してザクロの言葉を遮り、首を股に挟み込んで勢い良く布団にねじ伏せた。
綺麗に後始末をして、服を直してくれたのは考慮してこれぐらいで済ませてやる。
けどやっぱり、襲われて沢山喘がされた俺の怒りは治まりそうにない。
それにあんな事されて、ほんのちょっとでも気持ち良くなってたのかと思うと………あーー無理!
恥ずかしすぎて思い出したくもない!!
「誰があそこまでして良いって言った?!」
「約束は守ったよ!触っただけだし!」
「っ…屁理屈言うな!折角人が心配して…!」
思わず口に出しかけた言葉を飲み込むと、ザクロは驚いたように目を丸くした。
「オレの事、心配…してくれたの?」
「え…あ…ち、違う!誰がお前の心配なんかするか!!」
「ぐぇ!苦し…ッ分かった!分かったからもう離して!!」
ザクロを黙らせる為に太股で首を絞めたが、正直…心配をしてしまったのは、確かだ。
でなきゃ寝てるコイツに近づこうだなんて思わなかったし、あんな風に手を握って精気をやろうだなんて……と、自分の行動を思い返すと、駄目だ。
そこまでしてやる義理なんて無かった筈なのに、改めて考えると自分で自分が訳分からない。
そんな動揺しまくる俺に、解放されたザクロは軽く咳き込みながら不思議そうに此方を見つめ、クスリと幸せそうに笑われた。
「君が可愛すぎてキュン死にしそう」
「!…うるさいそのまま死ね、干からびて死ね!」
「あはは、うん、うん。可愛いよ章人!」
「鼻の下伸ばしてこっち見るな!」
文句を言えば言うほど、ザクロは楽しそうに笑うばかりで。
凄まじい敗北感に駆られているのに、本気で拒絶出来ない自分が嫌になる。
きっとコレは、全部コイツの淫力に当てられたせいだ。絶対そうに決まってる。
今の俺には、そう自分に言い聞かせる事しか出来なかった。
3-end-
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