プロローグ

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 付き合い始めて最初の頃は、女と歩いてる浩平を見ても隠れたりすることはなかった。  浩平と女の前にイキナリ現れて、とっちめよう、なんて思ってたわけ。  普通の男だったら、慌てるじゃない、こういう時。  で、アワアワいい訳するでしょ?  だけど浩平は違った。  私の顔を見て、にこにこ笑って嬉しそうな顔をする。  そして 「偶然だなー、ちょうど良かった。時間あったら一緒にメシ食う?」  なんてフツーに誘って来る。  隣りの女はロコツに「空気読んで断れよ!」って顔をするんだけど、浩平は彼女にきちんと私を紹介するのだ。 「この人、オレの彼女なんだ。一緒に食事に連れて行ってもいいかな?」  ってツレの女に堂々と訊いてしまう。  大抵の女は、ココでイヤとは言えなくて、私も断りきれなくて三人で食事に行く、なんてマヌケな展開になることが時々ある。  そんな時、浩平はものすごく嬉しそうに、 「美人が二人も隣りにいてオレってサイコーにラッキーな男だよね」  なんて明るく言うもんだから、つい、毒気をぬかれてしまう。
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