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「アイツね、中学の頃先輩女子と付き合ってたんだよ。高校になってから隠してるけどトキヤは極度の甘党。それが原因で二人は別れた。意外でしょ?」
西(にし)と名乗った彼はいたずらっぽく笑った。
西君はトキヤと同じ中学出身だそうだ。とはいえ、すぐにその情報を信じる気になれなかった。
「西君を疑うわけじゃないんだけど、それ本当? なんか今のトキヤからはイメージできないっていうか。甘党って顔じゃないし……」
悪魔顔で片手に置いたショートケーキを握り潰す絵面なら容易に想像できるのだけど。
「たしかな話だよ。その先輩女子って二個上の俺の姉さんのことだから」
いきなり信憑性が増した。トキヤは中学の時西君のお姉さんを好きだったのか。二個上ってことは、今は大学生か社会人?
「ガチなんだ……。でも、甘党男子なんて普通にその辺ゴロゴロいるよね」
現に、クラスの男子の何割かは昼休みに甘い菓子パンを頬張っているし私のイトコ三兄弟も全員甘党だ。トキヤをかばうわけじゃないけど……。
「西君のお姉さんって理想高い人? 甘い物好きってだけで彼氏振るなんて」
「理想高いとかじゃないよ。姉さんは昔から甘い物が嫌いなんだ。ばあちゃんちに行くたびまんじゅうとかケーキばかり食べさせられて気持ち悪くなったんだって。それから」
「ああ……。それはキツイね」
「そういうことがあったから、デートのたびにカフェやファミレスで甘い物食べたがるトキヤと一緒にいるのがだんだん嫌になったんだって」
「そうだったんだ……」
恋愛して誰かと付き合ったことのない私にはよく分からない感覚だけど、そんなことでダメになってしまうほど恋愛関係ってもろいものなんだろうか。食べ物の好みは、それは合う方が話も弾むのかもしれないけど。
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