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「それ全部食べるの!?」
「西に何か言われたんだろ。バレてんだよ」
「ぐっ……!」
鋭い。どうして分かったんだろう。あ、そうか。小箱に西君ちの店の名前が印刷されてるや。
観念し、私はテーブルに突っ伏した。
教室の中にトキヤと二人きり。やけに静かな朝。こんなシチュエーション初めてだし変な感じなのに別に嫌じゃない。
朝の静寂がさらさらと流れてゆく。桜の花が空中に舞う気配が制服に触れた気がした。
「それ全部あげる。だからもう変な意地張るのやめなよ」
「色々聞いたんだな」
「西君、寂しそうにしてたよ」
「アイツのせいじゃない」
「だったらそう言ってあげればいいのに」
だって、きっと誰も悪くない。
のっそり顔をあげ、トキヤの横顔を見た。相変わらず冷めた顔つき。でも、なぜだろう、今までみたいに悪く言う気になれなかった。
ただ黙って味わうように桜餅を食べている様子は幼い子のようにあどけなくて、少しだけ、ほんの少しだけトキヤのことが可愛いなと思えた。
「今さら何を言える? 一方的に無視して数年。西も今さら俺なんかと関わりたくないだろ」
「だったら私のとこにわざわざ来ないよ」
「何でサクラのとこへ……?」
「さあ……。トキヤの隣の席だから?」
いつもより口数の多いトキヤにハッとさせられる。こんなに話せるヤツだったんだ。今まで何度も顔を合わせた相手なのに全然知らなかった。
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