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先輩はたまたま吉本の上司だった。
吉本に対する仕事量と執拗な注意は増えたのに、先輩の、俺に対する態度は変わらなかった。これだから女なんて訳がわからないんだ。
給湯室で隠れて泣いていた吉本に、『そんな奴は心の中でぶっ殺しちゃえばいい』って言ったのはただの罪滅ぼしだった。
同僚を自分のプライベートにまきこんでしまって、不甲斐なかった。
それでも吉本は、誰かを悪者になんかしなかった。争わず、いつもマイペースだった。
吉本の、不器用で、ひたむきな姿に惹かれたのは、必然だったのかもしれない。
彼女が妄想好きと知ったのはその後だ。
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