君が笑えば

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  仕込みで明け方近くまで起きていた。 せめて一時間だけ……そう思って目覚ましをセットしてソファに横になったんだが、起きてきて察した親父が仕入れに走ってくれたようだ。 「義兄さんも?」 「うん。父さんに重いもの持たせるのもね。もう歳だし」 少し温くなった豆腐とワカメの味噌汁が身に染みる。 向かいで姉貴も味噌汁をすすっている。 「いつ来たの?」 「五時頃」 「なんでまた?」 昨日売れ残った惣菜の白和えをつつくと、姉貴は左手の親指で背後のお袋を指差した。 「緊急召集。 夜中に車飛ばしてきたんだから感謝してよね」 憮然とした表情で姉貴は続ける。 「大体一人でやるには限界があるでしょうよ。 パートさんだって増やせないし、クリスマスだけバイトなんて早々捕まらないし」 ごもっとも。 ここ数日自分を過信しすぎてたって何度も思ってた。 「元々年末は手伝うつもりでいたけど、二週連続になるとはね。 あんた、新婚の最初のクリスマスを奪った責任は重いからね。 売上云々より、最後まできちんとしなさいよ。色んなとこ巻き込んでるんだから」 お袋より手厳しい。 経営に関する才覚は俺より遥かにある人だから、親父同様今回の計画を無謀だと思っているだろう。 ただ、度胸もある人だから、絶対失敗はさせないと応援に来てくれたのだと思う。 「……助かる。サンキュ」 白飯を掻き込んだ。 姉貴に改まって礼を言うのは、少々照れ臭い。 「それは旦那に言って。休日返上で付き合ってくれるんだから。それと」 姉貴は意味深な目付きと変に歪ませた口許を俺に向けた。 「アキちゃんにもね」 お袋とお茶を飲みながら笑っているアキに視線を送る。 参るよ。 アキはなにも言わないけれど、ここぞというときに支えになってくれているんだ。
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