23人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
仕込みで明け方近くまで起きていた。
せめて一時間だけ……そう思って目覚ましをセットしてソファに横になったんだが、起きてきて察した親父が仕入れに走ってくれたようだ。
「義兄さんも?」
「うん。父さんに重いもの持たせるのもね。もう歳だし」
少し温くなった豆腐とワカメの味噌汁が身に染みる。
向かいで姉貴も味噌汁をすすっている。
「いつ来たの?」
「五時頃」
「なんでまた?」
昨日売れ残った惣菜の白和えをつつくと、姉貴は左手の親指で背後のお袋を指差した。
「緊急召集。
夜中に車飛ばしてきたんだから感謝してよね」
憮然とした表情で姉貴は続ける。
「大体一人でやるには限界があるでしょうよ。
パートさんだって増やせないし、クリスマスだけバイトなんて早々捕まらないし」
ごもっとも。
ここ数日自分を過信しすぎてたって何度も思ってた。
「元々年末は手伝うつもりでいたけど、二週連続になるとはね。
あんた、新婚の最初のクリスマスを奪った責任は重いからね。
売上云々より、最後まできちんとしなさいよ。色んなとこ巻き込んでるんだから」
お袋より手厳しい。
経営に関する才覚は俺より遥かにある人だから、親父同様今回の計画を無謀だと思っているだろう。
ただ、度胸もある人だから、絶対失敗はさせないと応援に来てくれたのだと思う。
「……助かる。サンキュ」
白飯を掻き込んだ。
姉貴に改まって礼を言うのは、少々照れ臭い。
「それは旦那に言って。休日返上で付き合ってくれるんだから。それと」
姉貴は意味深な目付きと変に歪ませた口許を俺に向けた。
「アキちゃんにもね」
お袋とお茶を飲みながら笑っているアキに視線を送る。
参るよ。
アキはなにも言わないけれど、ここぞというときに支えになってくれているんだ。
最初のコメントを投稿しよう!