第1章 「焦げたパンとワイシャツと二人」

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焦げた匂いがする。 あ…、またやってしまった。 どうして私はこんなに、成長しないんだろうか。 何度も同じことを繰り返してしまう。 真黒になった食パンを見ながら、泣きそうになる。 「焦げたパン」なんて誰が食べるのだろうか。 彼はジャケットを部屋から出てくると、ちらりとテーブルに目を向け、そらした。 「ごめん。急いでるから…」 そう言い残して、玄関の扉が閉まる。 "いってらっしゃい"なんていう間もなく、彼は出ていってしまう。 大丈夫、いつものことだ。 焦げたパンを一口食べ、ゴミ箱に捨てた。 苦い。 借金の肩代わりに結婚を要求されるなんて、漫画の世界だけだと思っていた。 おかげで両親のミカン畑はなんとか売却を免れ、私はこの高層マンションの最上階で、誰もが憧れるような時間を過ごしている、はずだった。 彼が私を見てくれさえしていれば…。 食器洗いを終え、洗濯ものを干す。 真っ白で大きな彼のワイシャツから、少しだけ香水の匂いがした。 いつもつけている香り。 濡れたワイシャツに顔をうずめ、透けたシャツの向こう側の結婚指輪を見つめる。 夫婦とは名ばかり。男女の関係にもなったことがない。 どうして彼は、私をそばに置いておくのだろう。
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