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タッ、タッ、タッ......
タッ、タッ、タッ......
夕暮れ時の学園通りには似合わない激しい殺気立ったヒール音。
一体何なのよ......
まだ親以外にキスだってされたことも無いのに......
力づくで握り閉められた胸がステップを踏む度に未だじんじんと痛む。
平日のこの時間ともなれば、帰宅の途につく女子大生で埋め尽くされるこの通りも今日は日曜日。
収入の大半が女子大生で占める各々の店もそのほとんどが日曜日を定休としている。
ほぼ無人と化した学園通りを駅へと向かって、ただひた走りに走るちょっとブルジョアな女子大生。
悔しいんだか、悲しいんだか、怖いんだか......
よくは解らないが、目からは大粒の涙が流れ落ち頬を濡らした。
走る、ただ走る......
とにかくあの男から1センチでも遠くに離れたかった。
あとちょっとだ!
涙にくれた二つの瞳にやがて映し出されてきたもの......
それは100メートル程先に動く僅かな人の姿と『学園都市駅』と書かれた大きな看板だった。
まだあの男は自分の後を追って来ているのか?
当然のごとく気になる話ではあったが、もはや振り返る事自体がトラウマと化しているこの状況下において、回れ右など出来る訳もない。
大きな荷物を細い右手だけで抱えながらの全力疾走は、先走る気持ちとは裏腹に体は悲鳴を上げていた。
足は縺れ、目は霞み、今にも倒れそうだ。
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