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ハァ、ハァ、ハァ......
3月上旬、春を間近に控えたこの季節とは言え、湿気を多く含んだ彼女の吐息は、飛行機雲のように白く後方へと列なっていった。
すると突如、脇道から本を読みながらつかつかと歩み寄る男の姿が視界に入る。
本を読んでいるだけならまだしも、両耳にはかなりごっついヘッドホン。マナー違反この上もない。
視覚も聴覚も機能していないそんな状況下において、フラフラになりながら走り寄る女子大生の姿などに気付く訳もない。
あっ、危ない!
ぶっ、ぶつかる!
心ではブレーキを掛けたつもりでいても、すでに縺れ掛けた足に、そんな切なる願いは届く訳も無かった。もうなるようにしかならない。
ドスンッ!
「「うわぁっ!」」
それは絵に描いたような正面衝突だった。
男女二つの体は、持ち物全てを噴水のごとく吹き飛ばし、鈍い音を立ち上げながらジェンガのごとく見事に崩れ落ちた。
何の構えもせずに、力士同士が取組を行えば、きっと同じような光景が見られるのであろう。
痛い.....何だか頭がクルクル回るんだけど。
ダメ!
こんな所でもたもたしてたらまたあの男がやって来る! 逃げなきゃ......大変!
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