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「多分ここに居るだろうなって直感的に思って来てみたんだ。そしたらやっぱここに居た。ラッキー!」
何気にスマホを覗き込んで見ると、上端に『着信3回』と表示が出ている。
そうだ......さっき真千子から着信あったんだっけ。後でかけ直そうと思ってて忘れてた。いかん、いかん......
しかし真千子はそんな事を気にしている素振りは全く見せない。
「『エブリドリーム』にまた小説書いてたんだ......この間最終章って言ってたけど、もう書き終わったのかな?」
真千子は背負っていたリュックを空いているオープンテラスの椅子に置きながら問い掛けた。
何だ......
いきなり痛いところ突いてくるな......
「ああ......一応最後まで書き上げたさ。でもさ、他のクリエさん達の投稿作品見てると結構みんなスゲーんだ。
何か公開する自信なくてさ......あと俺ってあんま社交的じゃねえじゃん。
他のクリエさん達とうまくやってけるかどうか......それも不安でな」
いかにも自信無さげな表情を浮かべる。自信がないんだからしょうがない......俺は心も顔も正直だ。それは青年の数少ない長所と言えた。
因みにさっきから真千子は俺の事を蒼太って呼んでるけど、それは小説サイトで言うところのペンネームじゃなくて本名だ。
如月蒼太(きさらぎそうた)......20歳。
小説家を目指す貧乏学生。自分で貧乏学生と名乗るのはどうかとも思うが、本当に貧乏なのだから仕方がない。
年は真千子より1歳上で大学2年。
一駅隣の『新小岩野駅』に住居を構える。住居を構えるって言ったって、6畳1間のボロアパートだけどな。別に見栄張ってるつもりは無い。
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