第二章 遭遇

5/15
前へ
/472ページ
次へ
「多分ここに居るだろうなって直感的に思って来てみたんだ。そしたらやっぱここに居た。ラッキー!」 何気にスマホを覗き込んで見ると、上端に『着信3回』と表示が出ている。 そうだ......さっき真千子から着信あったんだっけ。後でかけ直そうと思ってて忘れてた。いかん、いかん...... しかし真千子はそんな事を気にしている素振りは全く見せない。 「『エブリドリーム』にまた小説書いてたんだ......この間最終章って言ってたけど、もう書き終わったのかな?」 真千子は背負っていたリュックを空いているオープンテラスの椅子に置きながら問い掛けた。 何だ...... いきなり痛いところ突いてくるな...... 「ああ......一応最後まで書き上げたさ。でもさ、他のクリエさん達の投稿作品見てると結構みんなスゲーんだ。 何か公開する自信なくてさ......あと俺ってあんま社交的じゃねえじゃん。 他のクリエさん達とうまくやってけるかどうか......それも不安でな」 いかにも自信無さげな表情を浮かべる。自信がないんだからしょうがない......俺は心も顔も正直だ。それは青年の数少ない長所と言えた。 因みにさっきから真千子は俺の事を蒼太って呼んでるけど、それは小説サイトで言うところのペンネームじゃなくて本名だ。 如月蒼太(きさらぎそうた)......20歳。 小説家を目指す貧乏学生。自分で貧乏学生と名乗るのはどうかとも思うが、本当に貧乏なのだから仕方がない。 年は真千子より1歳上で大学2年。 一駅隣の『新小岩野駅』に住居を構える。住居を構えるって言ったって、6畳1間のボロアパートだけどな。別に見栄張ってるつもりは無い。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!

183人が本棚に入れています
本棚に追加