第二章 遭遇

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「何弱気な事言ってるの? 蒼太君らしくない......この間小説プリントアウトして貰ったの全部読んだよ。ハラハラドキドキで凄い面白かった。自信持っていいと思う!」 身を乗り出して必死に俺を力付けようする真千子。 身内に面白いと言われて『おお、この小説は面白いのか!』と素直に喜べる程、俺の脳ミソは単純に出来てはいない。 『社交辞令』『お世辞』そんな文字のネオン看板が頭の中で点灯を始める。 ダメだ。何か頭モヤモヤしてきた...... 「ちょっとトイレ行ってくるわ」 小説書きに熱中し過ぎるのもどうかと思う。トイレに行きたい事すら忘れてた。もうパンパンだ。 ううっ、漏れそう...... 突然のトイレ宣言に、真千子の顔はあんぐり。 外に居ると冷える。冷えると近くなる。近くなるとトイレに行きたくなる。 自然の法則に従い、俺はそそくさと店内に入ってトイレを探した。 トイレ、トイレと...... どこだ、どこだ...... おう......あった、あった。  ※  ※  ※ 一人オープンテラスに取り残された真千子。 お世辞で言ったつもりじゃないんだけどな...... いきなり席立っちゃって......怒ったのかな? 何気にテーブルの上に目をやると、飲みかけのエスプレッソと黒の飾りっ気無いスマホ。それが蒼太の物である事は言うまでもない。 スマホの画面はスリープ状態だ。 ちょっと見ちゃおうかな...... ちらりと店内を覗いてみると、蒼太がトイレの前で地団駄を踏んでいる。 空き待ちね......まだ戻って来なさそうだから見ちゃえ!
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