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「何弱気な事言ってるの? 蒼太君らしくない......この間小説プリントアウトして貰ったの全部読んだよ。ハラハラドキドキで凄い面白かった。自信持っていいと思う!」
身を乗り出して必死に俺を力付けようする真千子。
身内に面白いと言われて『おお、この小説は面白いのか!』と素直に喜べる程、俺の脳ミソは単純に出来てはいない。
『社交辞令』『お世辞』そんな文字のネオン看板が頭の中で点灯を始める。
ダメだ。何か頭モヤモヤしてきた......
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
小説書きに熱中し過ぎるのもどうかと思う。トイレに行きたい事すら忘れてた。もうパンパンだ。
ううっ、漏れそう......
突然のトイレ宣言に、真千子の顔はあんぐり。
外に居ると冷える。冷えると近くなる。近くなるとトイレに行きたくなる。
自然の法則に従い、俺はそそくさと店内に入ってトイレを探した。
トイレ、トイレと......
どこだ、どこだ......
おう......あった、あった。
※ ※ ※
一人オープンテラスに取り残された真千子。
お世辞で言ったつもりじゃないんだけどな......
いきなり席立っちゃって......怒ったのかな?
何気にテーブルの上に目をやると、飲みかけのエスプレッソと黒の飾りっ気無いスマホ。それが蒼太の物である事は言うまでもない。
スマホの画面はスリープ状態だ。
ちょっと見ちゃおうかな......
ちらりと店内を覗いてみると、蒼太がトイレの前で地団駄を踏んでいる。
空き待ちね......まだ戻って来なさそうだから見ちゃえ!
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