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えいっ!
真千子は公開ページを24ページまでに設定すると、躊躇なく『公開』ボタンを押した。と言うよりかは押してしまった。
ピコッ。
スマホは僅かな電子音を発すると、画面は蒼太の小説の表紙画面に移り変わり、そこには思いっきり『公開 連載中』の文字が浮かび上がっていた。
いっ、いっ、いやっちゃった!!!
慌て過ぎてスマホをテーブルの上に落としそうになる。
今この瞬間、蒼太の知らないところで蒼太の処女作がサイト内に公開された事は言うまでもない。
どうだ。参ったか!
心の中でそう叫んだ真千子。何が参ったのかは解らないが、少なからず心の中で、公開を躊躇する蒼太に対して苛立ちを覚えていた事は間違い無さそうだ。
勢いで『公開』ボタンを押してみたはいいものの、いざ押してしまうと今度は臆病風という突風が体の中で吹き荒れる。
今ならすぐまた『非公開』ボタンを押す事も出来る。マイページに公開したという記録は残らないから、何も言わなければバレるはずもない。
どうしよう......
でも......やっぱ私間違った事やってない。
だって小説書き上がっているのに、公開しなかったら誰の目にも留まらないじゃない。
私は彼女として当然の事をやったのよ。そう......何も悪い事なんてしてない!
蒼太君はちょっとぶっきらぼうなところ有るけど、ああ見えて結構優しいんだから。
きっと「ありがとう」って言ってくれるわ。そうよ......そうに決まってる。
でも......
小説投稿サイトって、出合いを求めて観閲してくる人もいるって聞いた事がある。本当かどうかは知らないけど。
大丈夫かしら......ちょっと不安かも。
蒼太君優しいし、自分の小説観閲してくれたら絶対嬉しいはずだし。
凄くいやな予感がする......
何なの......この胸騒ぎは?
真千子は再び立ち上がり店内の様子を伺う。見ればトイレの前に蒼太の姿は無い。
ヤバい。今頃用をたしてる頃だわ。もうすぐ帰ってくる!
ど、どうしよう......蒼太君が他の女と仲良くなるなんて絶対いや!
困った、困った、困った、困った、困った......
どうしよう、どうしよう、どうしよう......
ん......待てよ。
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