第三章 薔薇とバイオリン

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バイオリン? 果て......何の事? 私の大事なバイオリンはさっき持ち帰って来て、確かいつもの置場所に...... ノンは記憶を辿るかのように、ベッドの横の置場所なるスペースに目を向けた。 あれっ、無い! 何で? そう言えば...... さっきあの男に追い付かれて無我夢中で走った時に、確か男の人にぶつかったんだった。膝の傷はその時倒れて出来たものだ。 走っている時は間違いなくバイオリンはしっかりと右手で抱えていた。その記憶は今でも鮮明に残っている。 それでその後電車に乗った時は妙に体が軽かった気がする。 そうか......男の人とぶつかった拍子にバイオリンを落として、そのまま帰って来ちゃったんだ! 待って......あの時は取り乱してて何だか解らなかったけど...... 私に突き飛ばされた人、確か壁に激突して頭を抱えていたような...... 大変!!! 私......人を突き飛ばしといて、そのまま置き去りにして帰って来ちゃったんだ! バイオリンを届けに来てくれた人ってまさか?! きっとその人に違いない。 どうしよう......ちゃんとお詫びしなきゃ。
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