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スマホを持つ青の手をクンって引っ張った。青が電話して。俺じゃなくて全然かまわないし、ふたりで思いついたクレープなんだから。
「……あのさ、青、名前なんだけど」
「? クレープの?」
小さく頷いた。
「あおみつ、っていうのは、どうかな」
「……」
俺と青が考えたから。それに、ほら、白玉の中には蜜が入るんだし、緑のことを青って見立ててさ、「あおみつ」って呼んだらいいかなぁって。
「び、みょうだった?」
またフリーズした、と思ったら、ゆっくりと俺よりも少し大きい手が青自身の口元を覆い隠す。そして――
「せっかく、さっき、みつからの頭突き攻撃を避けたと思ったのに……」
「あ、青?」
「まさか、こういう形で攻撃してくるとは」
「え? ちょ、何? 俺、何もっ」
「萌え転がって、どっか飛んでっちゃうとこじゃんっ!」
そう怒った顔で言われても。真っ赤にして、白玉を連想させる頬を丸く膨らませて、眉毛なんて吊り上げたりしちゃった青が襲い掛かる勢いで飛びつくから、ちょっとびっくりしてしまった。
「あおみつ……とか、最高です」
そう小さく囁く青の低い声のほうが俺にとってはよっぽどの戦闘力を持った攻撃に思えるんだけど。
「よかった。あとさ、青」
「……んー?」
「なんか、スイーツ考えるの楽しかった」
「……」
和菓子もそうだけど、あれは合うかな、これはどうだろうって一生懸命に頭使うのはとても楽しくてドキドキした。
きっと青が一緒にいてくれたからだ。青の隣にいると何もかもが楽しくなって早くって気持ちが急いてしまうくらい。
「あとね、青」
「……んー?」
「急に抱き締められたので、キスとか、したくなっちゃったんだけど」
「…………えええええ!」
ちょ、鼓膜破けるから。耳元でそんな大きな声で叫ばないでほしい。耳がキーンって耳鳴りでおかしいことになっている。
「もおおお! ホントに、みつってば!」
「うん。ごめんごめん」
笑いたかったけれど、俺の笑い声は真っ赤になって怒った顔の青の唇に塞がれて、外に零れることはなかった。
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