2 テンパリングちょこれーと

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 分厚い辞書を差し出すと、骨っぽくて大きな手が受け取った。  当たり前なんだけど、違ってないほうがおかしいんだけど、保育園の頃とは全然手の形も大きさも違うんだなぁって実感できるくらい、男っぽい手になってた。 「チョコ、どうだった?」 「へ?」  手ばかり見ていた俺は突然の問いに驚いて顔を上げて、ミルクチョコレートをふた粒発見……じゃなくて、瞳と目が合う。 「あ、うん。すごく、美味かったよ」 「そっか、よかった」 「!」  ドキッと、してしまった。 「ごめん。借りてく、あ、宇野は放課後用事とかある?」 「え?」 「待ってて、返しに来るからさ」 「え? あのっ!」  これがモテ男子の笑顔ってやつなのか。くしゃっと笑った顔に、同じ男なのにドキッとしてしまった。  保育園でゼロ歳から五歳までずっと毎日一緒に泥んこになって遊んだ青君の、なんか、笑顔にドキッとして、それに驚いて、何も言えず、二日連続で紅茶のシフォンケーキ色をした背中をただ見送っていた。
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