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「もぉ嫌! どうして涙止まんないのよ」  太陽が昇っていたのなら、賑やかな声があちこちに響いてて、ここにいるだけで楽しい気分になれるのに。  現実的に今は月と星の輝きだけで、目の前に広がる遊具が冷たくて寂しくて、緩やかな風でブランコが揺れている、ただそれだけ。  誰もいないからこそ、誰にも見られないからこそ、色んな感情を晒け出せる今この場所は、私の数少ない安寧の場所。  そこで子供みたいに泣いているのにはちゃんと訳があるのであって、決して悲劇のヒロインの演技練習をしている訳では無い。  今日も今日とてあの女どもは私を見下し、笑い者にした。 「もうちょっと頑張ったら、見返す事できるのかな」  もう何度目かの大きな溜息がお腹にも胸にも溜まっている鬱憤を吐き出していく。  全然無くならないけど。
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