序章

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「フォルティオル・アルカヌス」 その力を手に入れたものには天を動かし、星をも動かすことができるという。 ただ、その姿がどんなものか、武器なのか宝石なのか、はたまた人間であるのか… 知るものはいない。 カツン‥カツン… 洞窟内につるはしの音が響く。ここにある岩はどれも鉱物が混じっており、半端にたたいては傷一つつかない。頬に汗が滴り落ち、手袋は土でボロボロになっている。 (ああ。寒い。空気も悪い。…早くこの時間が終わればいい) 湿った空気は風に乗り、金属製のさび付いた匂いに混じり、土と泥でまみれた肌にまとわりつくようだった。 隣にいる男が声にもならない声で呻く。 「クソ…いつまでありもしねえお宝を探さなきゃならねぇ…」 半ば力任せに振り下ろしたつるはしに何かがぶつかる。 「んっ?!」 カァーーーンっ… 今までとは違う確かな手ごたえを感じる。「お。おい…コレ」周りの男たちも群がり、その周辺を叩いていてく。 「おぉーーい…みつけたぞおぉーーー!!!」  狭い空間に畏怖の混じった妙な叫び声がこだまする。 慎重に周りを削り、現れたのは古びた金色の箱。 「おおお!!これは…!すぐにご連絡差し上げ ろ!!!」 ぞろぞろと男たちが集まり、歓声を上げる。    その箱は、長年地中に埋まっていたであろうに傷ひとつついていない。 ただ静かに、怪しい輝きを放っていた。 そのとき、箱の埋まっていた回りの土が地鳴りとともに崩れ始める。 「ほっ…崩落だぁーーーーー!!!!」 「崩れるぞ!!」 男たちは我先に逃げ出した。 そして、金色の箱は地上に持ち運び出されたのだった。
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