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花見デートをしているカップル、桜の見えるベンチで読書をしているメガネっ娘、弾き語りをしているお兄さん、宴会を楽しむサラリーマン……沢山の人達が桜の季節を喜んでいた。
ん? あれは?
少し先、桜の木のてっぺんで誰かがこちらを見ていることに気付いた。
近づいてみると、全身ピンクの衣装に身を包んだ可愛らしい少年だった。
「やあ。こんな所で何をしているんだい?」
僕が話し掛けると少年は満面の笑みを見せた。
「フフフ、君が来るのを待っていたんだ。さあ行こう」
少年は小さな羽を動かし近付いてくる。
「君にいいものを見せてあげるから」
少年はそう言うと、僕の手を引き桜に沿って進み始めた。
そこから何キロも進み、一際大きな桜の木へと辿り着く。
「ここが終点?」
「そうだよ。周りを見てごらん」
少年に促され辺りを見渡すと、一面に満開の桜が広がっていた。
その壮大な景色に言葉が出ない。
更に、少年と同じ衣装を纏ったたくさんの妖精達が桜から飛び出てきた。
「あそぼあそぼ」
「こっちに来て」
「来てくれて嬉しいな」
次々に声を掛けてくる妖精たち。
「さあ、宴を始めよう」
少年の号令で様々な果物が運ばれてきた。
妖精たちが歌い始める。風に揺れる木々がリズムを刻み、ウグイスが高音を奏でる。
楽しい音楽と舞う花びらに包まれ、自然と体が踊り出した。
少年と妖精たちとの時間はあっという間に過ぎていった。
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