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日が傾き、オレンジ色の光が桜を染める。
「もう夕暮れか……。楽しかったな。久々にこんなに笑った気がする。ここへ連れてきてくれてありがとう」
僕は少年の頭を撫でた。
「僕達もとっても楽しかった。またおいでよ」
少年と妖精たちは別れを惜しむように僕を取り囲んだ。
「うん。絶対にまた来るよ」
最高の笑顔で別れを告げる。
手を振る少年と妖精たちに見守られながら僕は目を閉じた。
ひと呼吸おき目を開けると、見慣れた天井がそこにあった。
入所している施設の天井だ。
『ああ、戻ってきちゃった』
ここは長期入院施設。僕は難病によって何年も前から寝たきりの状態なのだ。
病気が判明した時は死にたいって本気で思った。だって……身体が自由に動かなくなるんだよ……。しかも治療法も見つかっていない難病。
まだまだやりたい事だって沢山あった。夢も……。それが実現出来なくなるんだ。夢を叶えるための努力さえ出来なくなる。何で僕が……と神様を恨んだね。
それにとても怖かった。どんな苦しさに襲われるのか。
こんな状況になれば誰だって絶望するだろう。
でも僕は死ぬ勇気も無く、運命をそのまま受け入れることとなった。今考えればあの時死ななくて良かったと思う。
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