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俺は一階の駐輪場で、自転車を探しながら頭を抱えてしまった。大切にしようと思っていたのに、一回目のデートで手を出してしまうとは思わなかった。自分で、自分の行動に頭を抱えてしまう。しかも、相手は初めてだったのだ。もっと、時間をかけて知り合っていきたかったが、俺はやはりバカかサルなのかもしれない。理性が吹っ飛び、即、実行してしまう。
でも、榎森はとても可愛かった。理性が保てるはずはないと、自分を弁護してみたりもした。
「やっぱり、俺はバカ」
俺が自転車に跨ると、上空にカラスの群れが飛んでいた。縄張り争いなのか、激しくカラスが喧嘩している。
その中に、白いカラスがいるように見えた。
「白いカラス?」
アルビノだろうか。でも、白のカラスはかなり強かった。他のカラスを、体当たりで撃墜させていた。
「まずい征響が帰って来る……家でサッカーの練習をしよう……」
すぐに、榎森の件はバレてしまうだろうが、やはり、誰にも言いたくはない。情事は秘密がいいのだ。
第二章 鴉 弐
自宅に帰り、サッカーの練習を始めると、妙に湯沢に共感してしまった。湯沢は、有明を慰める内に、抱いてしまった。俺も、今日はその気持ちが良く分かった。
「湯沢、有明は元気か?」
「元気って、印貢と同じクラスでしょう……」
湯沢の肩を叩くと、一瞬で湯沢は意味が分かってしまったらしい。
湯沢は足元のボールを止めると、困ったように俺を見た。
「榎森さんと、そうですか……」
すると、秋里と倉吉にも意味が通じてしまった。
久芳家の中庭は広いが、どうしてか俺の周囲に固まってくる。そこで、倉吉に思いっ切りボールを蹴り込まれてしまった。
「ちゃんと、避妊しろよ!」
「常備、持っています!」
秋里が、中学生を他の場所に誘導して行った。
「まあ、印貢は優花ちゃんもいたし、他にも色々といたからね。印貢の事は心配しないけど、榎森さん、よく許したね……そっちは心配だね」
秋里が顎に手を当てて考え込んでいた。どうして、榎森が心配なのであろう。
「初デートでそこまで許すというのが、榎森さんの性格に合っていないような気がする。何か悩みがあって、追い詰められていたのかな」
言われてみると、そうなのかもしれない。俺が悩もうとすると、周囲は練習に戻ってしまった。春留だけが、俺の足元に残っている。
「春留、ここの所、俺には何も言わないね」
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