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「学校側も矛盾しているよね」
学校側が征響を呼んだ代わりに、タクシーは用意してくれるらしい。
「あ、湯沢。俺達は練習があるの?」
「休みですよ。ちゃんと連絡網を確認してください。何でも、俺に聞けばいいと思っているでしょう」
実際、湯沢に聞けばいいと思っているので、連絡網を見ていない。でも、湯沢に反撃されるとは思っていなかった。
「天神に戻って練習しましょう。帰りますよ」
湯沢は、兄を呼んでいた。
湯沢は家に戻ると、ボロボロの手紙を持って、久芳家の庭にやってきた。湯沢は俺を呼ぶと、庭を出て、天神の森の階段にやってきた。
階段からは四区が見え、遠くに一区なども見えている。森の隙間からであるが、ちゃんと区別できるようになった。
四区が特殊な土地であると、認識するようになってから、境界線があるように見えてきた。
「湯沢、どうしたの?」
湯沢が階段に座り込んだので、俺も横に座った。
木漏れ日でも眩しいので、今日は激しい晴れなのかもしれない。
湯沢が広げたボロボロの封筒の中身は、手紙であった。
「有明からか?」
冒頭に、印貢音読とあった。
「俺は、印貢や湯沢達が大好きだ。印貢と出会って、久芳先輩や倉吉先輩、秋里先輩の雲の上の人達が近くになった。一緒に食事などして、俺は有頂天になった」
でも、その反面で有明は車椅子になり、病気になったりもした。有明は、天罰のように思ったともいう。でも、湯沢のフォローで、又未来を考えるようになれた。
「湯沢音読だそうだ」
手紙の途中でチェンジが入った。
でも、湯沢は音読せずに、数行飛ばした。それは、有明からの告白であった。
湯沢を巻き込んで悪かった事、でも、湯沢と結ばれて嬉しかった事、又、好きだとあった。
「印貢は特別、湯沢は親友で恋人だった。でも、湯沢が親友だけになっても、嬉しかった。二人とも恋人と仲良くしてください。未来で二人の子供に会えると思うと、嬉しい」
再びチェンジがあった。
「湯沢、大好き。印貢、困った奴だと思ったりもしたけど、やっぱり大好き。二人とも幸せにね」
俺は困った奴なのか。陽射しが陰ったと思ったら、後ろに相澤が立っていた。相澤の後ろに、征響達も立っていた。
「この手紙は、今日付でポストに入っていました」
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