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学園刑事物語 電光石火 後編
第一章 鴉 壱(からす いち)
一学期の期末試験の順位を、親である久芳 佳親(くば よしちか)と季子(きこ)に見せると、感嘆されていた。
「……問題児で、問題発言も多いバカなのに、成績はいいのだよね……」
佳親は、順位を見て溜息をついていた。
「本当にね……」
希子もさりげなく、俺に失礼であった。
でも、俺にも問題ばかり起こしている自覚はある。
「でも、流石に進学校となると弘武でも十位以内だね。一位ではない」
やはり、勉強に集中している者には勝てない。でも、試験のためだけに勉強するというのは、俺には性に合っていない気がする。学ぶ事は嫌いではないが、試験という枠にはめて考えるのは苦手なのかもしれない。
「言葉で覚えてしまったので、英語の文法的なものが苦手みたいです。相澤さんが教えるのが上手なので、夏休みに頼んでみます」
相澤とは、同じ教室にいる相澤 真名斗(あいざわ まなと)であった。この相澤は、高校に潜入捜査している刑事で、俺よりも十歳程年上になる。刑事ということは秘密であるのだが、様々な事件のせいで、一学期が終わる今の時点で、ここの天神区の面々や、一部の四区にも相澤の素性がバレている。
「そうねえ、相澤さんは一流大学を卒業しているしね」
相澤は目立たないようにしているが、容姿的には高校生で問題がなかった。成績も、上位でも目立たないようにしている。しかし、俺のせいで、相澤は、ある意味では目立ってしまい皆が知っている存在だった。
「相澤さんは、勉強が苦手なので、教えるのが上手なのだと言っていましたよ」
得意分野は、知らずに覚えてしまうので、分からないと言う事が、理解できないのかもしれない。
「弘武君に教えるとなると、動物の調教並みに根性と努力が必要ですしね。相澤さんに頼みましょう」
希子は、俺を何だと思っているのだろう。
俺は、印貢 弘武(おしずみ ひろむ)高校一年生。相澤の元で、学園刑事のバイトをしている。親である佳親と名字が異なるのは、親子であるということも隠した事項であるからで、表向き俺と佳親は兄弟ということになっている。
「よし!いい教師も見つかったし、弘武。夏は島で泳ごう!」
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