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征響は部屋に鞄を置いてくると、俺と同じく期末の成績を佳親に見せる。佳親は、成績を見てから苦笑いしていた。
征響は、スポーツ万能、頭脳明晰という肩書がある。それは、一度も崩した事はない。征響は、何をするのも真剣勝負なのだと、最近はよく分かった。
「征響は、まあ、いつも通りね。でも、見てよこの弘武の成績……」
倉吉も加わって、俺の成績を見つめていた。
「意外だ。印貢は、バカの一種かと思っていた。あ、でも、成績を置いておくとバカの一種なのか?」
倉吉のコメントに、秋里も頷いていた。
「言語以外は、パーフェクトなのか……」
そこで、俺の成績は置いておいて、彼女の話で盛り上がってしまった。
「弘武。榎森って知っているだろう。私立一年の一番人気の女子だよね。告白されたって?」
それは、今日、校門の前に立っていた女子であった。女生徒数人でやってきて、声を掛けると去って行った。何をしに来たのだろうと、俺が首を傾げていると、湯沢が今のは告白だよと教えてくれた。
髪の短い元気そうな子で、確かに可愛い。
「……振られたって本当ですか?今、彼女はいませんね?って聞いてくるから、喧嘩を売られたのかと思いました」
その後が聞こえなかったが、続きがあったのだろうか。
「……女子に喧嘩を売られたとか思わないようにね。付き合って欲しいそうだよ」
どうして秋里が代弁するのであろう。
「俺の日常は知らないのですよね……知っても平気かな……」
「悩むよりも付き合ってみたら、どうせフリーなんだし」
倉吉も容赦がない。でも、考えるよりも行動した方が早いのかもしれない。好きなどは、付き合ってみてから分かる事かもしれない。
「電話番号も知りませんけど、次があれば回答します」
次などないと思っていたが、部屋に戻ると俺の携帯電話に電話が掛かってきていた。どうして番号が分かったのだろうと、考え込んでいると会話が進んでいた。
「あの、考えていただけたでしょうか?」
「俺で良かったら、いいよ」
榎森は、丁寧な口調であった。
「すごく、嬉しいです!」
何故、俺なのか聞いてみると、征響の所に遊びに?行った俺を見ていたのだそうだ。俺は、征響と遊んだ記憶が全くない。練習しようと言われては、征響にサッカーボールをぶつけられ、倉吉には踏みつけられている。
そのしごきが、遊んでいるように見えるのか。榎森も強者だと、感心してしまった。
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