学園刑事物語 電光石火 後編

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 榎森は、幼稚園から私立に通う、いいとこのお嬢様であった。父親は天神二区にある会社の経営者で、母親はマナー教室やフラワーアレジメントを教える講師をしていた。兄は私立の大学部に在籍している。 「……俺では、まずいような」  「久芳もいい家柄だよ」   俺は久芳ではなく、印貢なのだ。 「征響の方が合っている気もしますけど」 「征響には、怖い彼女がいるからさ」  征響の彼女というのも知らなかった。秋里によると、幾度も久芳家には来ているという。征響の彼女は、同じ学校の同じ学年で、生徒会の書記であり、バレーボール部の部長らしい。 「何というのか、強者……」 「美人だけどね、気は強いよね。どことなく、藤原のお母さんに似ている」  それは、かなり強い。でも、征響の彼女という気はする。征響に守られているのではなく、ライバルとして張っている。 「榎森は季子さんのようだよね。守りたいタイプだ」 「そうですね。大切にしたいです」   秋里の彼女は、年上だという。倉吉にも彼女がいて、どうも、俺と同じ高校一年生らしい。  それぞれに、彼女がいて、天神の天狗とは別の世界があった。 「そうか……皆、ちゃんと彼女がいるもんだな」  天神区とな最近まで馴染みが無かったせいで、皆の彼女事情など知らなかった。 「生意気に印貢にも、彼女がいただろう」  俺は、倉吉にサッカーボールをぶつけられていた。
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