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「なあさくらさん。ちょっと出かけるぞ。一緒においで」
家業の家具屋の得意先である加川は、今では時折こうやってさくらを誘ってくれる。
染め物を生業とする加川が、仕事に使う版木の彫刻をさくらの父親に頼んできたのが出会ったきっかけだ。
とは言うものの、頻度に比べたら深度はさっぱりである。
「加川さん。いつも突然ですが私にも都合と言うものが……」
「そりゃ残念だ、また今度な」
「大丈夫です!行きます!」
加川がニヤリとするのがわかり、さくらは唇を噛む。
まんまとこの人のペースに乗せられてしまったのだ。
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