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日が少し傾くほどの時間が経った。
加川は何とかこちらの世界に戻ってきたようだ。
「今日はこんなもんだな。さくらさんごめんな、つまらなかったろう?オレは満開の桜よりこっちが好きでさ」
「いえ、私もどちらかと言えばこっちの方が~」
「無理しなくていいよ」
加川は笑った。
「見てごらん、咲いた花は白に近いけど、蕾は濃い色だし、がくの部分なんてめったにないくらいの紅色だ」
「そう言えばそうですね……。咲いた桜の花びらって、桜色じゃないんですね」
「遠くから樹の全体を見渡して、初めて桜は桜色に見えると思うんだ」
当たり前だけど当たり前ではない。
まだまだ知らないことばかりだとさくらは感心した。
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