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加川はそんなさくらの様子をじっと見つめ、スケッチブックを取り上げた。
携帯用の絵の具を、無造作に置いていく。
生き生きとした色をのせられたさくらの絵は、見違えるように艶やかになった。
「オレの仕事は一部を切り取って全体を表現しなくちゃいけないんだけど。自然やひとの美しさってのには到底届かないな」
加川の口調は明るく愉しげで、少しも悔しくはなさそうだ。
「これが今日一番のさくらだな。永久保存版だ」
【完】
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