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prologue 黒滅の世界
その黒滅たる世界は、この世の何処に存在するのだろうか。 宇宙よりも真っ暗で、神羅万象の何も感じない場所。 そんな世界にて、
“俺は、死んだのかな。 結局、望ましい解決も出来ず。 広縞の魂が、悪霊と入れ替わった”
と。
無なる夢の中で、男性の声が湧いた。
〝声〟
と、云えるのか。 思いがただ単に響いているだけかもしれない。 然し、その意識に湧いた想いの声に、周りは一切の反応を示さない。 空気の動きも、何かの騒めきもない。 そんな静寂に包まれた黒の世界で、男性は・・。 いや、木葉刑事は確信を得た。
“俺は、やはり死んだんだな。 嗚呼、佐貫さんと叔父さんに会えるだろうか・・・。”
自分の居る世界が、もう生死や意識が意味を為さない場所と解り。 無駄でも望めるならばこれしかないと、湧き上がった素朴な想いの声。
だが、何も見えない、何も無い、色や形すら無い‘無の世界’。 真っ黒いのか、真っ暗闇の世界だ。 自分がどんな風に成って居るのか、それすら彼には解らない。 そして、これで何度目に成るのか解らないが。 怨霊と成った女性の事件から、またこれまでの経緯を回想し始めたのだった。
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